2011/09/29

119 北総石仏 柏の石仏 中新宿

中新宿は柏市南西部にあって、松戸市と流山市にくい込んだ場所にあります。特にこれといった石仏は見当たりませんが、路傍や寺院に祀られたものを記録しておきます。
119-1 須賀工業研修センター脇の庚申塔(中新宿3-6)
県道261号線が麗澤学園の西をはしっています。その県道沿いの研修センター脇の斜面に2基が祀られています。
写真左が享保九年(1724)の六臂合掌青面金剛塔、右が宝暦十二年(1762)文字青面金剛塔となっています。道路拡幅整備でこのようになったようです。写真では明るい雰囲気に思えますが、一抹の侘しさを覚えるのは感傷的に過ぎるのかも知れません。
119-2 中新宿・行念寺の石仏
先の地点から県道261号線を150m北上すると、左手に浄土宗行念寺があります。明応二年(1493)松戸の東漸寺開山、愚底上人開基となっています。昭和43年再興の鉄筋コンクリート造りの本堂が立派です。
参道の両側に石仏が祀られています。右手は六地蔵を含め12基が並んでいます。
左端:墓碑 右から2基~7基:六地蔵
右端は元禄九年(1696)延命地蔵尊、続いて安永九年(1780)六地蔵、明和四年(1767)十九夜塔、h宝暦九年(1759)中新宿女中が建立した延命地蔵、安永七年(1778)三面馬頭観世音は惜しいことにかなり荒れています。
面影は残る三面馬頭観世音
 参道を挟んで反対側にも石仏が2基並んでいます。宝暦二年(1752)青面金剛塔、文化十四年(1817)文字青面金剛塔です。
左が宝暦二年青面金剛塔・右が文化十四年塔
 お堂の中に文政六年(1823)二童子付不動明王がおられましたが、お姿がいかにも素朴な(稚拙な?)感じでアマチュアの手作り感が漂っている雰囲気でした。
台石左:矜羯羅童子 右:制多迦童子
 今回は地理的な制約もあってこれだけとしましょう。

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2011/09/20

118 北総石仏 柏の石仏 酒井根Ⅱ


前回に引き続き酒井根です。昔、このあたりは境根と呼ばれていたそうですが、「境根原の合戦に勝った大田道灌が喉を潤した井戸があり、まるで酒のようであったことから以後酒井根に変わった」とか述べられています。(続 柏のむかし)
118-1 酒井根薬師堂の西国八十八箇所
酒井根薬師堂は前回の龍光寺の南西150mの高台にあります。石段傍には文久二年(1862)八十八箇所石標はありますが、古いガイドにある文化九年櫛形彫像石標は見当たりませんね。

薬師堂の由来は正長元年(1428)創建・天正五年(1577)本堂再建、その後堂守となった河瀬鳳瑞師が整備して八十八箇所を整えたと解説板に詳しく載っています。じっくりお読みください。

さて、八十八箇所石仏は右回りに「従是阿波国二十三箇所」摸(異体字)の石柱から始まります。きちんとしていて往時の盛況振りが分かりますね。
 第一番は霊山寺から始まります。続いて国毎に「土佐君国二十六箇所」「伊予国二十六箇所」「讃岐国二十三箇所」の道標に続いて札所のご本尊が祀られています。荒れた石仏も多いのですが気に入ったお姿のいいものや気になる仏を載せておきましょう。
一番霊山寺・施無畏与願印・釈迦如来
七番十楽寺・定印阿弥陀如来
十番切幡寺(きりはたじ)千手観音
二十四番最御崎寺(ほつみさきじ)虚空蔵菩薩
二十五番津照寺(しんしょうじ)・延命地蔵菩薩
三十六番青龍寺(しょうりゅうじ)不動明王
四十番観自在寺・薬師如来
五十六番南光坊・大通智勝如来(『法華経』の化城喩品第七に説かれている仏)
六十三番吉祥寺・毘沙門天
二十六番光明院(通称西寺)・医王善逝大師(薬師如来の筈?)
三十番大日寺・金剛界大日如来
 
八十番国分寺・十一面千手観音(前面で合掌手と定印)
 広い運動場のような広場の周りに下の写真のように並んでいます。昔はもっと趣があってご利益豊かな雰囲気だったのでしょう。

 四角いお顔や像容から限られた人数の石工によるものが見て取れます。うずめられた霊場のお砂はどうなったのでしょうか?
118-2 酒井根の八坂神社
前回の龍光寺の門前を200m北上すると右手に四脚の稚児柱をもつ木製の両部鳥居が見えます。
創始は鎌倉後期弘安年間(1278-88)との伝承が「土村史」に載っているそうです。享保十八年牛頭天王を社殿に祀り再建、明治に八坂神社と改称と市史が推定しています。
石仏は石祠ばかりですね。保存状態もよくありません。寂しいことですが。
嘉永六年(1853)不動明王で磐座に制多迦童子矜羯羅童子が見えます
小さなお堂に上の写真の成田不動が祀られています。境内の際には小さな石祠が並べられていますが、民間信仰の落し物みたいで、参る人がなければ廃れてしまう有様が哀れです。
左から文化四年大杉大明神・文化四年山神宮・明治27年雷電大神
今回はこれまでとしましょう。
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2011/09/14

117北総石仏 柏の石仏 逆井・酒井根

逆井は旧柏市域の最南端で旧沼南町・松戸市と接しています。東武野田線の西側にあって畑作の丘陵地の多い農村部です。
117-1.逆井の厳島神社(デーダラボッチの左足跡池)
県道280号線で、東武野田線をくぐった先のカーブした坂道下に厳島神社があります。柏市のふるさと散歩道・デーダラボッチコースに組み込まれています。あまり綺麗な池ではありませんが、ネットに散歩道紹介でよく出ています。
本体には昭和9年の弁財天石祠が祀られています。昔から「旱天のときに池を祓えば雨が降ると言い伝えで時折池祓いがなされた」と市史に載っています。
ついでなので「デーダラボッチの右足跡」を先回りして載せておきましょう。
117-2.酒井根のイボ弁天(デーダラボッチの右足池)

右足跡池と石仏とは関係ないですが、参考までに載せておきましょう。現在は東山2丁目の住居表示にあって傾斜地をひかえたちょっと分かり辛い場所にあります。
「右足跡といわれてもなあ」と思いながら昔の人の信仰を集めた旧跡を参ってきました。
117-3.観音寺の石仏
本尊は不動明王と十一面観音の真言宗豊山派のお寺です。元禄六年(1693)の逆井村寺社御改帳に二間四方の観音堂があったと記されています。境内の明るいお寺でお庭がのびのびとしていて気持ちよく訪れることができます。

紀年不明の六地蔵の手前に無縁仏と一緒に石仏が祀られています。
上の写真前列左端は文化八年(1811)百観音巡拝塔・次が元禄十年(1697)三猿庚申塔になっています。碑面が荒れていて痛々しいですね。後列に文化二年(1805)の十九夜如意輪塔が祀られていました。
117-4.逆井天神社の天神像
観音寺の近くにある逆井ふるさと会館の手前に、小さな木鳥居のある天神社があります。拝観したところ、御神鏡で隠れていますがご神体はすらっとしてしっかりした道真像です。
市史によると宝暦十三年(1763)となっていて、久しぶりに出来のよい道真侯を拝ませていただきました。境内には寛政十二年(1800)の待道大権現石祠も祀られていました。
117-5.逆井道端の庚申塔群
県道280号線の道端(逆井1157先)にカーブミラーと並んで庚申塔など11基の石塔が置かれています。
畑地を背に道路際ぎりぎりのところで、観察するにも通行車で危険な場所に置かれていて厄介ですね。その危険度はGoogle Street Viewを使えばよく分かります。
余談ですが、私はこのGoogle Street Viewで訪問時の記憶を呼び起こしたり、訪問前のシュミレーションで事前に石仏所在地を確認したりして結構便利に使っておりますよ。
さて石仏ですが、左から天保十二年(1841)湯殿山主尊の三山塔・寛保二年(1742)と享保六年(1721) の六臂合掌青面金剛塔・紀年?文字庚申塔・文化四年(1807)文字青面金剛塔・享保十三年(1728)六臂合掌青面金剛塔・紀年不明文字青面金剛塔・紀年不明六臂合掌青面金剛塔・剥離不明石塔・2基の不明石祠と並んでいます。
一番大型の享保十三年青面金剛塔
逆光と通行車で命がけの写真は悲惨なものになりましたが、上の写真を載せておきましょう。
117-6 酒井根・龍光寺の石仏
酒井根6丁目にある寛永二年(1625)開創と伝わる曹洞宗のお寺です。入り口に「インド仏跡の土を踏む参道」の開設石碑が立っています。参道の敷石に分かりやすく表示がしてあるのも面白いですね。
石仏は山門を入った左隅角に祀られています。10基の石仏が祀られています。
 上の写真左から宝永元年(1704)地蔵菩薩・宝永八年(1711)文字庚申塔・明和元年(1764)青面金剛塔・天保八年(1837)大日如来塔(資料にはアーンクの記載あり胎蔵界大日?)・天明二年(1782)火炎光背不動明王・元治元年(1864)大黒天塔、金属製の聖観音像に続いて昭和5年光明真言塔・元禄十六年(1703)と延享二年(1745)の十九夜如意輪塔となっています。
不動明王と大黒天の石仏はちょっと珍しいので載せて置きましょう。
火炎光背の不動明王

柏北部から北の農村部で見られる大黒天
117-7龍光寺墓地の石仏
龍光寺の後背にある墓地に変わった石仏があります。墓地内参道に無縁仏などを集めた一画があります。その中に編み笠をかぶった旅姿の武士を刻んだ珍しい石塔を見つけました。昭和4年の紀年銘ですが、いったいなんじゃらホイ?
又、少し離れて延命地蔵が1基佇立していますが、「南無大慈悲地蔵菩薩十九夜念仏供養」と刻まれています。地蔵型の十九夜塔というわけですね。
宝暦七年(1757)の十九夜地蔵塔
今回はこれまでとしましょう。
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