2015/05/11

164E 史美会第21回石造美術勉強会(備中高梁)参加記録

今回は京都に本部がある 史迹美術同攷会の「石造美術勉強会」に参加した備忘録です。史迹美術同攷会とは、1930年に川勝政太郎先生が創設された由緒ある石造美術の研究会です。私も昨年入会した新参者ですが、関西の石造遺物を知りたくて御仲間に入れていただきました。後日の会報に詳しい記録が載りますが、写真を整理がてら備忘録をアップしておきましょう。岡山南部所在の中世鎌倉期石造物のオンパレードです。主催者のS会員や解説のM先生皆様に大感謝です。

164-1 保月(ほつき)六面石幢・宝塔

岡山市の北西約30kmの山間に高梁(たかはし)市があります。日本一高い山城備中松山城を誇っています。JR伯備線高梁駅から北東約16Kmの上有漢(うかん)の山里にすばらしい六面石幢です。一面に七仏+五面五仏=十二仏像が刻まれています。「十三仏成立過程を示す遺物として注目される」と日本石造美術辞典241pに記載があります。(以下、美術辞典と略称)

s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢032
道路から見上げた所、正面が六面石幢、右が宝塔です
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢001
嘉元四年(1305)、もとの請花宝珠の代わりに小五輪塔部分が載せられています
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢030
わが国最古の石幢がこれほどの状態で保存されていtビックリ
尚、第一面(阿弥陀・釈迦・弥勒・普賢・薬師・地蔵・不動)第二面(観音)第三面(勢至)第四面(阿弥陀)第五面(虚空蔵)第六面(不動)と刻まれているようです。・・日本石造物辞典
   
下の宝塔は基礎の刻銘に「奉刻彫・・五輪塔婆一基・・」とあるので元は五輪塔ですね。こちらは嘉元三年(1305)で大工伊野行恒は同じ作者。    
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢012s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢028k

164-2 保月三尊板碑

六面石幢への道路沿い斜面に斜めに傾いで建っています。高さ3.1m花崗岩で重厚感があります。上から釈迦・定印阿弥陀・錫持地蔵の三尊を刻みます。これらの3基とも「大工伊野行恒」の銘をもち大和の伊派の一人の手になるものです。同じ板碑でも関東の青石板碑との違いにビックリです。

s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢037s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21保月宝塔六面石幢034

164-3 土居の二尊板碑

中国自動車道有漢IC西方を通る県道49号線の、土居集落はずれの道路沿い石垣上に小屋根をかけてに祀られています。下の解説板「遣迎二尊」(けんげいにそん)とは此岸にあり往生者を見送る釈迦如来と、彼岸である浄土からこれを迎えに来る阿弥陀如来のことをいうそうですね。勉強・勉強。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21土井二尊板碑001ks-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21土井二尊板碑003
昼食は「うかん常山公園」でした。風速3m(すすきが揺れる程度)で回る石の風車が7基18風車があるユニークな公園でした。s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21石の風車公園001

164-4 祇園寺の宝塔・十三重石塔


高梁駅北15kmの祇園山高所にある祇園寺。大杉は大山に行く天狗が羽を休めたので天狗杉とか、1200年の樹齢だそうです。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21祇園寺宝塔十三重石塔010k
境内隅に石段をくみ上げ建立されています。軸部に四方佛(釈迦・薬師・弥勒・阿弥陀)を彫り、笠には風鐸を吊った穴があります。年代は刻まれていませんが、美術辞典では鎌倉後期に分類されています。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21祇園寺宝塔十三重石塔001k
境内の反対隅には、市有形文化財指定の十三重石塔が建っています。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21祇園寺宝塔十三重石塔024k]
竜泉寺からの帰路、参道に六角が建っていて素通しの壁際に8基程大師塔・地蔵塔などが祀られています。その参道際に4基の石塔が並んでいます。左から納経百八十八箇所供養塔・南無阿弥陀仏名号塔・享保の錫持地蔵・文政の常夜灯です。自然石を利用した独特のものです。往時はにぎやかだった所から集められたのでしょうか、ちょっとバラバラ。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21祇園寺近傍003
右に見える東屋風の建物が六角堂、石仏が見えています
164-5 竜泉寺阿弥陀三尊板碑

瀬戸内第十四番観音霊場竜泉寺は高梁駅から西方8kmのところにある、真言宗善通寺派(この地区は多いですね)のお寺で本堂前の白砂がきれいなお寺です。
境内の片隅に屋根をさしかけて角柱状に建てられています。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21龍泉寺阿弥陀三尊板碑006
元享四年(1324)来迎阿弥陀像が柱状に刻像
頭部二条線の所に後から工作された窪みが2個。月輪形2個と来迎阿弥陀立像の下に観音・勢至菩薩の梵字を刻みます。
帰り道、庚申堂の表示があるお堂をのぞくと奥におられたのが下の写真の神様です。石造ではないですが、多分六肘の青面金剛様ではないでしょうか?
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21龍泉寺近傍庚申堂003

164-6 恵堂(えどう)の地蔵石仏

備中高梁駅から西へ約4km、成羽川沿い国道313号線地蔵前バス停におられます。石灰岩で高さ1.85mの延命地蔵です。岡山県で2番目に古いとか。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21恵堂地蔵002s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21恵堂地蔵004

164-7 頼久寺庭園(小堀遠州作?庭園)

小堀作助政一(遠州)が備中松山城を継いだ時、城が荒れていたためこの寺で政務を執ったとか。その頃に作られた蓬莱式枯山水式庭園で、鶴島・亀島・サツキの青海波・愛宕山借景など桃山江戸初期に好まれた傑作庭園とか。
とはいえ、S会員から遠州作庭などを含めた現状理解に関する詳しい説明をいただきました。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21頼久寺庭園011
正面が愛宕山、三段に見えるサツキが青海波、その手前が鶴島です
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21頼久寺庭園024
火袋の穴の丈夫に仏(地蔵?)のお顔が見えます
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-21頼久寺庭園003k興味深いのは庭園隅の石灯籠です。暦応二年(1339)西念勧進の石灯籠ですが火袋が四面とも浮き彫りの仏身を刳り抜いて作られています。会員同士が見つけて大いに盛り上がりました。なんでだろう。

164-8 備中松山城と城下町

高梁は岡山の小京都といわれるような町並みです。s-史美会岡山見学会2015-03-22備中高梁市街散策031s-史美会岡山見学会2015-03-22備中高梁市街散策013備中松山城は「天空の城」にもなぞらえる山城です。兵庫但馬の竹田城は標高353mですが、こちらは天守閣つきで430mの高さにあります。雲海に浮かぶ天守閣は地元の人のご自慢です。駅前の通りから見ると標高差は360mですね。

s-史美会岡山見学会2015-03-22備中高梁市街散策054k
正面山頂が切れ込み状ですがこちらに天守閣が
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22備中松山城038
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22備中松山城008k


164-9 清水寺(せいすいじ)平清盛供養塔

JR高梁駅の北西12km、隣町吉備中央町の山里に天台宗清水寺があります。清盛が仁安三年(1186)に十二坊を建立、寺領三百石を寄進したとの由緒。s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22清水寺平清盛供養塔001k
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22清水寺平清盛供養塔011花崗岩製総高2.6m、塔身正面に胎蔵界大日如来を刻み銘文はない。鎌倉後期から南北朝の作との推定。寺の由緒書で清盛の供養塔と伝え「西国で海路から遠く離れた史跡は珍しい」と吉備中央町史に書かれているようです。
宝塔のある高台の下には西国33観音霊場の主尊が勢ぞろいされていました。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22清水寺平清盛供養塔009

164-10 加茂総社宮 (リンク先のWikiprdiaで由緒をご覧ください)

s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22総社石灯籠地蔵立像001
樹齢160~550年の杉の巨木が自ずから由緒ある荘厳感を漂わせます。こちらには、県指定の康安四年(1281)の安山岩製八角灯篭と貞治四年(1365)和泉砂岩製地蔵塔が見学対象です。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22総社石灯籠地蔵立像010s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22総社石灯籠地蔵立像006k
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22総社石灯籠地蔵立像016
本殿脇柵ないに灯篭と地蔵
164-11 鼓神社 宝塔(Wikipediaリンク先)

岡山県足守駅北9kmにある備中国二宮と伝える神社。境内はずれに、今回見学で一番の見応えある宝塔です。総高4.18m、塔身正面は深い龕に金剛界大日を厚彫りし、側面は扉型の模様。笠軒裏も繁垂木を掘り出し圧倒的な存在感ある宝塔でした。貞和二年(1346)沙門正因が勧進元をつとめ大工妙阿が造塔しています。「沙門」とは僧侶であると辞書にありますが、当時は修験道と密接に結びつきがあったと推測したいですね。関東の大日塚・大日塔を連想してしまいます。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22鼓神社宝塔011ks-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22鼓神社宝塔002廃神林寺の遺物のようですが、これだけのものが山中の神社に残されている事に驚きますが、岡山の石造文化の懐の深さに感心しました。神社の山門に随身がおられました。由緒あるんだ。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22鼓神社宝塔026s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22鼓神社宝塔027

164-12 足(葦)守八幡神社石鳥居

岡山空港の南西5km、国道429号線近くに葦守神社が鎮座します。その南参道入り口に中国地方最古の石鳥居があります。「笠木の反りや先端を垂直に切ったところは鎌倉時代の形式である」(美術辞典)そうです。
s-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22足守八幡神社石鳥居001ks-史美会岡山備中高梁見学会2015-03-22足守八幡神社石鳥居009

二日間にわたり中国地方の有名な石造物や庭園を見学することができました。さらに会員の皆さんでいろいろな指摘や解説をいただいた事は貴重な経験でした。ありがとうございました。